こんにちは。民間学童common代表の空田です。 2学期のcommontime(探究学習プログラム)での学びを、保護者の皆様や流山おおたかの森の地域の方と共に、その学びと成長を喜び合うWelcome common Day(以下WCD)が無事終了いたしました。
今回も9割以上のご家族にご参加頂き、地域の学校の先生など地域の方々にも多数ご見学いただきました。
以前のブログでも触れましたが、民間学童commonでは学び方としてアクティブラーニングを取り入れており、WCDでは自分たちが体験したことを来場者に教える(伝える)ことを大切にしています。この他者に教える(伝える)ことを大切にしている理由としては、他者に伝えることが、アメリカNTL(National Training Laboratories)が提唱しているラーニングピラミッドにおいて、平均学習定着率が約90%と言われているからです。(参考ではありますが、受け身の講義の学習定着率は5%とされており、体験や人に伝えることが、自身の中への影響が多いかが分かります)
今回の探究学習プログラム「common time」のテーマは「ものづくり」
WCDでは、民間学童commonの探究学習プログラム「common time」で約3ヶ月間取り組んだ「ものづくりを通して社会を見てみよう」の概要の紹介が行われました。
common timeでは1つのテーマを学びのハブにして、子どもたちは各曜日の視点からで体験的に遊びながら学んでいきます。 探究学習を進める上でのキーワードは「自分事化」、そのため、私たちがcommontimeのテーマを選ぶ時は、なるべく子どもたちの生活に身近なモノゴトをテーマとしていきます。
今回のテーマは「ものづくり」です。現在の日本社会はモノが溢れている社会で、何か必要であれば、大抵のものはすぐ買えてしまい、昔から続く人間の営みの1つである「作る」ということがどこか忘れられているのではないでしょうか。
そのため、commontimeで「ものづくり」というテーマを扱うことで、その仕組みやプロセス、そしてその背景にある文化やヒトの想いに触れて欲しいと考え、このテーマを選びました。
加えて、私たち民間学童commonの育みたい5つ力の中に、「 思いを形にする行動力」「対話や議論を通してアイデアを伝える表現力」があるので、この力にも触れて欲しいという想いもありました。
それでは、これから各曜日について下記にて触れていきたいと思います。
common time1週目は「ものづくり」のマスターが登場
1週目は子ども向けのSTEAM教室を長く経営されていた岡田さんがマスターとして登場。岡田さんはロボットプログラミングや、ピタゴラ装置の制作、レーザー加工機を使ったものづくりなど、子どもたちが主体となった探究型の活動を主に行っていました。そのほかにもロボットコンテストの世界大会に出場する子どもたちを育てたり、科学館でイベントを行ったりしてきた、正にものづくりマスター。
そんな、岡田さんを招いて民間学童commonのオリジナル探究学習「commontime」の一週目がはじまり、「ものづくり」のワクワクとドキドキを子どもたちは味わいました。
この時間では、岡田さんが普段から取り組まれている「糸掛けアート」を見て、それが金星と地球の軌道を基に作られていることから、子どもたちの背丈よりも大きい直径180㎝もある風船を太陽、ピンポン玉を地球にみたて、太陽系を体感したり、並列回路と直列回路を使った「どれが本物のスイッチ!?」などで電気の不思議を体験したりしました。
風船を膨らませているときは、その場にいたスタッフを含めた子どもたち全員が割れるのがいまかいまかとドキドキハラハラしてみていて、この経験と感情が子どもたちの中に深い印象として残り、4年生1学期で触れる天体のときに「そういえば!」って思い出して欲しいなと思いました。
そんなワクワクドキドキから、今度は自分たちでものづくりで試行錯誤を体験してもらうために、「レゴを使ったコマをどれだけ回せるかチャレンジ!」にチームで取り組み、子どもたちは「もっと持つところを長くしたら回るんじゃない?」「重さをもっと重くしたらいいんじゃない?」など自分たちで色々と話し合いならが、とても楽しく取り組んでいました。
そして、友だちのコマが回っていると「いいね!回っている」と、友だちの取り組みを認める声もあがっていて、活気が溢れた1週目となりました。
レゴをお持ちの方も多いと思いますが、レゴは自分の頭の中を様々な形のブロックを使って表現でき、イメージが違えばすぐに壊して作り直せるという、試行錯誤を知らず知らずのうちに楽しみながら試せる玩具の1つなので、ぜひともご家庭でもそのような目線で子どもたちを見取ってあげてもらえたらと思います。
1つのテーマを様々な視点から学ぶcommonの探究学習
民間学童commonの探究学習プログラムの大きな枠組みは、1つのテーマを様々な視点から子どもたちの好奇心の種を基にチームで学んでいけることです。
これは探究学習が螺旋型の学びと言われるように、それを軸に周辺のことを連鎖的に学んでいくことを意図しています。加えてチームで学んでいくことは、私たちの学びに対する考えが、対話の中で答えを生み出していくことを重視する、社会構成主義的な学びを大切にしているからです。
さて、今回のcommon timeでは「ものづくり」について「文化・工芸(月曜)」「アート(火曜)」「サイエンス(水曜・木曜)」「キャリア(金曜)」という視点で学びました。
ここからは、それぞれの曜日でWelcome common Dayまでの約9週間、どのような活動を行ってきたかを簡単ではありますが、書いていきます。
多くの‘地域’、多様な‘もの’「文化・工芸(月曜日)」
「文化」とは?、「地域」とは?問われると難しいこちらのテーマ。日本国内だけでも、気候や農作物、歴史的建造物など、様々な軸によって違いがあります。
最初に作ったコマにも、実は地域性がありました。日本だけでなく世界中のコマを調べ、同じものでも地域によって様々な形や特徴があることを体験的に学んでいきました。多くの地域があること・地域によって異なるものがあるということを、調べ学習や発表を通し感じることで、将来子どもたちが知識として学んだときに今回の経験が繋がっていくと考えています。
また、子どもたち自身にもっと自分たちが住む流山おおたかの森に親しみを持ってほしいと思い、流山おおたかの森駅前の観光センターを訪れ一番身近な流山について学びながら、地域NPOの方とも交流を深めました。そこで子どもたち自身が驚いたことや、お友達に伝えたいことをクイズとしてみんなで出し合い、地域についてみんなで学び合いました。この教え合ったり学び合うことはピアラーニングといい、アクティブラーニングの1つの学び方でもあります。このピアラーニングは高校や大学でも取り入れられ、多様性が組織やコミュニティで大切とされている現代社会ではとても大切な学び方であると私たちは考えています。
その後は、千葉県や流山おおたかの森の地域性を取り入れたコマづくりとゆるキャラづくりを行っていきまいした。子どもたちに好きな方を選んでもらい、それぞれのアイデアを形にする表現力と、お互いのアイデアをグループとして1つの作品にまとめていく社会性スキル(チームワーク)が発揮され、更にそれらが育まれていました。
流山おおたかの森の地域は近年の人口増の影響から、子どもの人数も増えている影響から、公教育だけではどうしても子どもたちそれぞれの好奇心によりそった少人数でのグループ活動が難しくなっている印象がどうしてもあります。そのため、私たち民間学童commonでは教育施設として社会性スキルや自分の考えを発信する力の育成にも力を入れています。
日常に溢れる‘もの’、その裏には作ってる‘ひと’がいる「アート(火曜日)」
私たちの身の回りの多くの”もの”で、私たちの生活は豊かになり、それにはつくる”ひと”がいます。またアート的な視点でものづくりを見つめると、ものづくりの歴史を通じて様々な表現方法も発展してきていることが分かります。今回は、前回のcommon timeでも扱った食器について注目し、陶器で食器づくりに挑戦しました。
陶器とはどのような器なのか観察するところから始め、設計ではデザイン思考とアート思考の2つから、子どもたち自身で考えました。
日常に溶け込んでいるものに焦点を当て、知見を深めることで、子どもたちの視野が広がっていきました。
マスターが来たあとの2週目は、まずは「ものづくりって何だ?」という原点に立ち返り、ものを人の手によってつくられたものと定義し、commonの施設内にある‘もの’を探す「ものみっけゲーム」から入り、全てのチームが50個以上書き出し、中には100個以上書き出したチームもいるくらい、子どもたちは熱中していました。
自分たちの生活に沢山のものが溶け込んでいることを再発見したあとは、食器をテーマに、陶芸に取り組みました。ここではプロセスを大切にし、そもそも自分たちが使っている食器は何でできているんだろうという「なぜ?」という疑問を大切にしたいため、顕微鏡で磁器と陶器の同じと違いをよく”見る(観察)”することから始めました。ものとものをよく観察して比較することは理科的な「共通性・多様性」の見方にも通じます。
その後は、陶器の作り方をグループで調べて、どのように作るかを組み立てて、実際に制作に移るのですが、今回のアートでものの作り方の考え方「アート思考(自分が欲しいな・良いなと思う)」「デザイン思考(何か困ったことをどうにかする)」を紹介したこともあり、子どもたちはどちらにするかを決めて設計図を描き、オリジナルの食器づくりに取り組みました。
実際に食器を作っている過程では、円筒(コップ)は長方形でできていたり、平らな面を作るのが意外に難しいなど、様々なことを気が付き、作りながら学んでいました。作り終わった後も、作りっぱなしではなく、「ココ見て!ポイント」をそれぞれが挙げていきます。子どもたちは「頑張ったところ」「工夫したところ」などの想像はできていますが、意外とそれを言語化することの難しさに気づき、試行錯誤をしながら振り返りをしていました。
私たち大人もそうだとは思いますが、実際やった後の振り返りが大切なのは頭ではわかっているのですが、おざなりにしがちです。ただこの振り返り(内省)は探究活動の中ではとても大切なプロセスですので、子どもたちにとっても難しいことではありますが、振り返りのプロセスを体験することで、将来、自身の一つの学び方にしてもらえたらと考えています。
組み合わせは無限大「サイエンス_電気・磁石・ゴム(水曜日)」
ものとものを掛け合わせたり、使い方を少し工夫すると時に思いがけない発見があります。絶対的なオリジナルが生まれずらい現代において、この何かと何かをかけ合わせたり、ダイバーシティ豊かな組織の中で他の人の意見と自分の意見を組み合わせて新たな価値を創造していく「リミックス(Remix)」という考え方は社会でも広く浸透してきています。
ものづくりにおいても、このリミックスという考え方はとても大切です。工作を活動の軸とおいたサイエンスの水曜日では、まずはそのリミックスを体験できるようにチームビルディングを意識して「紙コップタワーチャレンジ」を行いました。ここはさすが子どもたち!、さっそく取り組み始め、やりながら「これだと低い、コップを逆に置いたらいいんじゃない」「あっ、あっちのグループあーやってる」などと、グループ内外問わずよいものをどんどん取り入れてチャレンジしていた姿が印象的でした。
次の週は、磁石の仕組みを学びました。ここでは、そもそも磁石が身の回りの何にくっつくのかを知るために、commonの施設内にあるものでくっつくものとくっつかないものを探し出しました。その中で、「紙にはくっつかないけど、お札はどうだろう」という子どもの疑問が生まれ、確かめてみると、引き寄せられることをびっくりし、更に原因を突き止める活動に移り、驚きが子どもの学びを深めていきました。
他にもゴムの引っ張る力や戻る力を学んだり、電気がどのように作られているかを知るために手回し発電機やレゴのモーターを使い、豆電球1個の時と2個の時の違う場合の回す力の違いも体感しました。また、電池が1個と2個の時の光り方や熱さの違いなどを、「なんかこっちの方が熱い?、すごく明るい!」などと感触や視覚を使いその違いを学んでいました。この辺りの学びは小学校3年生(4年生)で扱う電気の性質や電流の働きという単元で行い、「量的・関係的」な考え方に触れました。
そして、ゴム・電気・磁石のそれぞれの性質を活かしたアトラクションやおもちゃがあるコモンランドを造り、9週目の日曜日に行われるWelcome common Dayでお父さんお母さんに見てもらおうということになりました。この子どものならではの楽しい発想にcommonらしさを感じました。あるチームは「磁石を使った車」づくりに取り組みあえてタイヤをガタガタにしてみたり、ゴムの伸び縮みの性質を活かした野球盤(commonで野球が流行っているところからの発想)、装飾チームはフォトスポットなどを作り、来た人たちが嬉しい気持ちになるようにと、制作をしていて子どもたちの優しさを改めて感じる瞬間でした。
身近な素材のちがいを覗いてみよう「サイエンス_科学(木曜日)」
身の回りのものには様々な工夫、製作者の試行錯誤が隠れています。そのための素材選びはものづくりの基本ともいえるでしょう。木曜日では素材の性質を、科学的手法で調べて、それぞれが一番伝えたいと考える方法で最後のWelcome common Dayで伝えることに取り組みました。
まずは、世の中にある素材はどのように分類されているかを知るために、commonの素材棚にある材料を、全てブルーシートにざざぁっとひっくり返して、チームで仲間分けを行いました。最初は木・紙・プラスチックなど分かりやすい分類からスタートしていましたが、やわらかさ・燃えるかどうか・触り心地など、どんどん独自目線の分類していきました。ここでは「共通している特徴はどこか?」「他とは違う特徴は何か?」という共通性・多様性の見方を大切にしました。
次の週からは、プラスチックという1つの素材に注目しました。プラスチックと一言でいっても、様々なプラスチックが世の中には存在するため、今度はプラスチックと思われるものばかりを集め、分類のやり方について案を出し合いました。この中では子どもたち自身から「穴をあける!・溶かす!・強く握る!・浮かす!…」など様々な分類の方法がでてきて、子どもたちの発想の豊かさがとても印象的でした。
ここからは、集めた4種類のプラスチックを3つの水溶液に浮かべる実験を行い、それぞれどうなるか記録をしていきました。もちろん実験前にはどなるかの予想をそれぞれが行い、予想と結果を比べるというドキドキな瞬間がいくつもありました。
そんな実験で分かったことをどのように表現するかを話し合い「実験の道具を展示」「本を作る」「クイズを作る」などが決まり、自分たちが学んだことを、どう見る人に伝えていくかを工夫していました。
commontimeでプラスチックを学んだことをきっかけに、学校の図書館でプラスチックに関する本を借りてきて紹介してくれる子がでてきたり、分類したことをきっかけに、施設にあるレゴをどう分類したらよりみんなが遊びやすくなるかなどに、取り組んでくれる子どもたちがいたりと、活動がとても広がりました。
なりきってみよう!ものづくりのお仕事「キャリア(金曜日)」
多くのもの(商品)が生み出されている今日。商品が私たちの手元に届くまで、多くの人々の仕事が結び合わさっています。
ものを分解することで作業(仕事)を想像し考えるところから始め、実際にアイディアを出すクリエイター、デザインをするデザイナーになりオリジナルの商品を工作することで、様々な仕事があることを体感しました。
商品制作では予算を設定し作る中で、これまでにないものづくりの難しさを感じ、思考力を働かせて新たな工夫が生まれていました。
マスターが来た次の週は、身近な時計をみんなで分解していき、普段何気なく使っているものが、多くの部品からできることを知り、完成するまでに多くの過程があることを体感し、完成するまでのプロセスを子どもたちはそれぞれ想像を膨らませていました。他にも色々と分解してみたいものがでてきて、その中から磁石を分解したり(割ったり)もしました。
普段完成品ばかりにふれているからこそ、分解するという学び方を経験することで、どのように作られているかに興味を持つきっかけになってくれたらと思います。
ここからは、2学期ということもあり、クリスマス商品を作ることに。それを①企画(考える)②制作(作る)③販売(売る)という3つのプロセスに分けてグループごとに取り組みました。デザインする過程では、相手の素敵と思ったポイントを書いて渡すということをしたり、またクリスマス商品をつくる際には予算があることを伝え、実際500円を渡して同じフロアにあるセリアに買いに行ったりしました。
更に、この途中には、ストロベリーフィールズというアパレルブランドの東さんにcommonにお越し頂き、洋服づくりのお話を子どもたちの前でして頂きました。子どもたちからは「つくるのが一番大変な服はなんですか?」や「工夫していることはなんですか?」など様々な鋭い質問が出てきて、私たちもびっくりしました。
そして商品づくりが終わるといよいよ値段を決めるのですが、今回500円という予算(原価)があるため、「500円より高く売らないとね」「あまり高すぎると買ってくれないよぉ」など、予算があることで、色々と話し合いや気づきが生まれていたのがとても印象的でした。
民間学童commonで大切にしたいこと
このように、私たちがcommon timeに取り組む上で大切にしていることは、子どもたちの好奇心に火をつけ、1つの物事を多角的にチームで共に学び続け、子どもたち自身の世界が広がるように、学びの環境設定を適切にすることだと考えています。
1月中旬から始まる次のcommon timeも、子どもたちの新しい発想と出会えることがとても楽しみです。
common 代表 空田