世界の教育事情から読み解く・・・探究学習ってなんだ?<2>

子どもたちに必要な「学び」の概念が変わろうとしています。

自分で考える力、それを表現し、伝え、判断する力、そして人とつながる姿勢。

未来を幸せに生き抜くための学びの手段として、今、取り入れられているのが「探究学習」です。

「探究的な学び」とはそもそも何か。

最新の教育事情に詳しい専門家に、今、求められている学びの形について語ってもらいました。

評価のあり方も変わる。点数主義から、個性を活かし先へ繋げる教育へ

ーー 先ほど、「優秀さ」「点数がつかない学び」という言葉が出ましたが、探究的な学びやプロジェクト型の学習を行うことで、これまでの教科学習とは違い、評価の形も変わっていくのでしょうか? 

 

山本: そうですね、まずは「評価」はなんのためにあるのかを、立ち返って考える必要があるかと思います。テストの点を見ると、暗記力や計算能力などについてはわかりやすく評価ができます。しかし、他人とどう関係性を持つか、意志を伝えるためにどういう場を設定し、言葉を選び、プレゼンテーションするか、という学びの中では「評価」よりも、先ほど空田さんの話にも出た「フィードバック」が重要です。

 

藤原: そもそも「英・国・数・理・社」のような認知的なテストだけを評価の基準にすると、捉えられる能力の範囲が少なすぎるという問題があるんですよね。山本さんがおっしゃるように、テストでは言語力、記憶力が高い子が圧倒的に有利になる。しかし、本来は、もっと色々な能力があるわけです。例えばレポートにまとめるのが上手だとか動画編集が上手だとか、調べることが上手だという子はそれを発揮すればいいし、一方で、”勉強”という意味ではそれほど高いパフォーマンスを発揮できないとしても、人の気持ちを共感できてチームの中で非常に高い信頼を得る子もいる。そういった能力は今、とても求められているし、大事なことですよね。

 

 

ーー テストの点数のようなわかりやすい指標がない中で、評価をするというのは難しいところもあるかと思います。他にどのような評価の方法がありますか?

 

空田: 一人ひとりの得意なことを見ていくには、やはり大人をある程度配置して、細かく見ていく必要があるとは思っています。プロジェクト型の探究学習ではなおさらそうで、 common では、細かくフィードバックを行いながら、ルーブリックのような評価手法を利用し、それぞれの子のどこを伸ばしてあげられるかを考えてサポートします。同時に、保護者の皆様にも、お子様が日々どのような活動をしどんな学びを得ているかを、レポートにしてお渡ししています。他のお子様との比較ではなく、それぞれの子たちが、こういうことができた、こんな成長が見られたということを伝えることが大切かと思っています。

 

山本: おっしゃるように、本来は、一人ひとりの子たちが「自分は今どういう状態にあるのか」「どんな学びや練習が必要か」に気づくためのアドバイスであるべきなんですよね。点数で、他人と比べたり、他より劣っていると感じる必要は全くない。まずは、教育機関がそこに気づいてほしい。周囲の大人からのフィードバックを通じて、「自分は今、ここが足りてないんだな、次は自分はここを学びたい」と変化していくのが理想だと思います。

 

藤原: 私は、究極の評価は自分で自分のことを自分の言葉で説明できることだと思っています。まずは、私はこういうことが好きでこれがやりたいと言えたり、こういうことをされるのは絶対嫌だと主張できること。また、自分の強みや弱いところを認知し、人の役に立ったり必要に応じて助けを求められることが大事です。最終的には「わたしはわたしであっていい」というような自己への信頼を子どもたちが持てるようにサポートするのが教育の役割ではないでしょうか。